365 Portland

ポートランドのクラフトビール。

ポートランド・OPHのビールクラフトビールから見えてくる、ポートランドという都市のあり方。

この20年、ポートランドが全米で住みたい街のランキング上位に登場するようになるのと平行して、クラフトビールを醸造するブルワリーの数も増えていったように思う。いち早く州法が改正されビール製造が容易になったことで、若者たちが自分たちのビールをつくろうと次々にマイクブルワリーを立ち上げていった。その勢いはリーマンショック後の不況下でも変わらず、現在、人口約60万人のポートランド市内だけで52、メトロエリアも含めれば71、世界一のブルワリー都市である。ビールの種類も、それぞれがIPAやペールエール、スタウトといった定番のほか、季節限定ビールも供給するので数えきれない。

ローカルブルーが街のトレンドをつくる。

この地でブルワリーが盛んになった背景には、オレゴンの良質で豊富な水、質のいい麦とホップの栽培に合った気候という物理的なアドバンテージはあるだろう。自家醸造用の道具も簡単に手に入るし、庭でホップを育てている人もよく見かける。日本では蕎麦を打つ趣味の人がいるが、それと似た感じでみんな気軽にビールづくりに挑戦する。

そうした興味がクラフトビールをいっそう身近なものにしているのだと思う。ブルワー達は競い合いながら個性豊かなビールを創造する。クリエイティブで時に遊び心に溢れたクラフトビールは自由でイノベイティブな土壌に育まれて、今ポートランドにはローカルブルーによる大きな潮流が出現している。

時間を味わい、空間を楽しむためのビール。

ビールを飲むことは時間を味わうことでもある。実際、この街では誰もがいつでもビールを楽しみ、生活の一部として定着している。夜だけでなくデイタイムもハッピーアワーも、人と会って話す時も一人静かに過ごす時も、そこにはフレッシュなクラフトビールのグラスが欠かせない。そしてグラスとともにある幸せな時間を味わっている。

それは日本で言うところの「飲みに行く」という感覚より、むしろカフェに近い。魅力的な都市にカフェはなくてはならないものだが、ここポートランドではそれがある部分ビールに置き換って(ポートランドはカフェ都市としても素晴らしいのだが)、新しい都市文化の領域が生まれている。

さらに、ブルワリーの空間が非常にアトラクティブであることも特筆すべきことだろう。その多くが古い倉庫や工場をリノベートして醸造所にし、バーカウンターを設けてパブをオープンさせている。それを自分たちの手で成し遂げたところも少なくない。そうした手づくり感が普段着でくつろげるネイバーフッド感覚にもつながっている。その存在は地域や街並に少なからず影響を与え、居心地のいいコミュニティを生む大切な要素にもなっている。

地元コミュニティが愛し、育てていく

ほんとうに多様性のあるコミュニティは初めて訪れる人にも決してよそよそしくはない。住人にやさしいだけでなく、誰でも受け入れてくれる気さくさとオープンで風通しのいい雰囲気がある。ポートランドのブルーパブは、初めて訪れても1パイントを飲み終わる頃にはまるで近所の行きつけのように自然になじむことが出来る。

そんなローカル・コミュニティの柔軟さが、この街をより生き生きさせる原動力になっているのだと思う。 美味しいローカルクラフトをつくり、愛し、育てようとする人々がいるポートランド、この街がたまらなく魅力的なのは、ローカリゼーションのとても分かりやすいかたちがビールを通して見えてくるからかも知れない。

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特集「クラフトビールを飲みに行こう」ではポートランドのブルワリー、ブルーパブを時にじっくり、時に軽くホッピングして、ご紹介していきますね。

特集「ポートランドのビール屋」その1 Bailey’s Taproom を読む

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