ポートランドと言えばハンドクラフト、というくらいこの街ではものづくりが盛んだ。知り合いにもDIYで家を大改装してしまう人が結構いるし、新品を買うよりリサイクル素材を自分で工夫する方がクールという感覚がある。
当然、素材やデザインには独自の思い入れがあるし、大量生産される製品にはできない味わいがある。今回はハンドクラフト・ジュエリーに見るポートランドらしさを表すテーマ3つを挙げてみた。アクセサリーとしてよく見かけるかどうかではなく「ポートランダーの心」という意味で。
1.ラスティック+モダン Old & New
荒削りの木や廃材や自然のままの石と、ガラスや鉄といったシャープでモダンな素材を組み合わせる。これはショップのインテリアでも最も今的なテイスト。アクセサリーの場合は素朴なクリスタルを幾何学的なデザインに入れ込んだり、ブラスプレートを大胆にカットアウトして皮と合わせたりする。
高価でソフィステケートされたものより、ラフな素材の持ち味を楽しむのがポートランド流。そもそもあまり高額な物はウケないので、アクセサリーの価格は10〜60ドルのカジュアルなアイテムが中心。

ハンドクラフトと言えば外せないショップがダウンタウンのCrafty Wonderland。ポートランドのハンドクラフト・アーティストの小作品がぎっしり。アクセサリーの製作者は多いので、いつもたくさん置いている。
オキシダイズド(酸化させた)チェーンとブラスの組み合わせは定番。大胆な幾何学デザインもポートランダー好みで、よく見かける。大きめのモチーフか、逆にすごく小さいものが人気がある。
2.自然を取り込む
昔からのポートランダーにとって欠かせない場所、それはパール地区のヒップなレストランじゃなくて、やっぱり街を取り巻く自然だと思う。自然テーマというのは、素材感で言えば上のラスティックにも通じる。でも、ポートランダーにとっては単にネイチャーというだけじゃなく、やっぱりオレゴンというローカル感が大切。何といっても”ローカル・プライド”の街なのだから。
ところで、ミシシッピ通りに「Worn Path」というネイチャーテーマのグッズ・ショップがある。私の本でも紹介したのだけど、オーナーのナイルズ・アームストロングの個性を感じるなかなか素敵な店だ。
マーケティング目線ではなく彼自身の趣味と感性で選んだ品々は、そのままいかにもポートランダーのセレクトと言えるだろう。ナイルズはミュージシャンでボーダーだそうで、それもポートランダーっぽいのだけど、風貌というかやる気なさそうな物腰もまたポートランド的かも(?)。
ところで、彼が店を開く切っ掛けとなったのが、自分で作ったアクセサリーだ。いつもの海岸で拾った流木のかけらを適当にネックレスにしたら友人達に好評だったのが発端らしい。前に「ドリフトウッド・フォート」にも書いたようにオレゴン・コーストには森の迫るところが多く、流木の多さが特徴でもある。
実は上、筆者の私物です。ナイルズのネックレスの話を聞いて興味を持ったのだけれど、当面作る予定はないとかで諦めていた。ところが日本のあるオンラインショップで見つけちゃった!すごく酸化して黒ずんでいたから、入荷してから随分長く経っていたんだと思う。ビームスでもいくつか仕入れていたそうで、さすが日本だなー。
オレゴンの自然から着想を得たグッズは多いけれど、アクセサリーの場合、これを昇華するのは難しいんじゃないかな。たとえばMt.Hoodのペンダントって聞いても、そんなに欲しい気がしないし。試しに検索してみた。興味があれば「Mt.Hood jewelry」でグーグル・イメージサーチしてみてください。
3.ポートランド・プライド
これは当然のように出てくるテーマ。でも、自然よりもっと難しいかもね。パリのエッフェル塔なんかはよくアクセサリーになるけど、ポートランドはアイコン的なものもないし。でも、いち早くこのテーマをヒットさせたのが、ポートランドのジュエリー業界ではよく知られた存在のBetsy & Iya(ベッツィ&アイア)。
ポートランドの11の橋をモチーフにした幾何学的なデザインのブレスレットは彼らの定番だ。お土産っぽくないのがいい。NWのスラブタウンに実店舗がある。
ポートランドの橋のアクセサリーって他にもあるのかサーチをかけてみたら、結構出てきた。もし関心があれば「Portland bridge jewelry」でイメージサーチを。上のカフの別の橋のバリエーションも見られる。
+おまけ
今回はテーマ3つだけと思ってたのだけど、ちょっとプラスαで。「ポートランダー」というアイロニカルなコメディが大ヒットしたのはご存知の通り。その中のエピソードに「ポートランダーは何でも鳥を描けばアートだと思ってる」というのがあって結構笑った。確かに。まあ、アートと思ってるかどうかは別としても、鳥のモチーフが好きなことは間違いない。実際、鳥モチーフのグッズは何でもござれ。特に多いのはカラスっぽいブラックバード系かな。でも、もちろん可愛いのもたくさんある。

アリッサ・シールのバード・イヤリング。女の子的キュートなデザインが人気だけれど、最近レーザーカットのメタルシリーズなど「ポートランド・トレンド」も意識しているらしい。心から楽しんでハンドクラフトしているのが伝わってくる。atealeaf.comで。 ©atealeaf
=お知らせ 1=
最近のポートランドがどんどん変わってきていることは度々お伝えしていますが、昨年出版した私のポートランド・ガイドブック「緑あふれる自由都市 ポートランドへ」でフィーチャーした場所にも変化が起きています。現在確認しているだけで3つのショップが閉店してしまいました。残念です。下記、お知らせします。
- Reading Frenzy (N.Mississipi Ave):ジン専門ショップ。オーナーが市のコミッショナーに当選を機に閉店。
- Belmont Records (SE Belmont St):中古レコード店。ビル取り壊しで閉店。
- Wanderlust (SE 28th Ave):ビンテージ・ドレスショップ。閉店してオンラインショップのみになる予定。
=お知らせ 2=
365ポートランドはツイッターもやってます。ブログには書いてない話や、ブログ更新のお知らせもつぶやいてます。
365Portlandかツイッター名のWordsOnTapで探してみてね。
ポートランド土産でジュエリー、自分でもよく買います。昨年は、beam & anchor で小さなイヤリングを買って帰りました。今日たまたましているのはお土産でもらった、パウエルズ向かいにできた Made in PDX ? のイヤリングです。
そしてそして、ドリフドウッドイヤリング?も持っています!これも同じくパウエルズ向かいのお店で買ったとのことで、地味なのにインパクトがあり、服が普通でもエッジが効いた感じになるので気に入っています。これもまた、焚き火イヤリングと呼んでいましたが、この記事をみて流木だったか、と。笑
Worn path、素敵でした。昨年秋に百木さんの本を見て行きました。ここではオリジナルTシャツを家族へのお土産に。
そして、reading frenzy がなくなってしまったのは残念です。一度しか行っていないのですが、おかしな体験をした思い出深い場所でした。
いつも、日本にいてポートランドを感じられる1百木さんのブログ、楽しみにしています :)
Mayuさん、Beam & Anchorはなかなか洒落た物をセレクトしてますよね。ハンドクラフト・ジュエリーとしてはポートランドでは価格が高めですが、日本のきれい目(←これ変なコトバですね)ファッションにも合う物があると思います。
Made Here PDXの方はプリミティブな感じの物も置いていることが多いです。
そしてドリフトウッド・イヤリング、お持ちなんですね! たぶんナイルズの作品ではないでしょうが、流木はもはやPDXアクセサリーの定番素材になっているのかもしれませんね。
それも潤沢な森があってこそですが、先日コロンビア河流域に大火災(子供の火遊びが原因)が起こり、その被害は莫大なものになってしまいました。人災の場合は生態系にも相当影響しそうで今後の森の再生が懸念され、みんな本当に心を痛めています。
冬に楡の古木が雪折れした時、周辺に停車していた車数台がぺしゃんこになっちゃったのですが、みんな木が折れたことをすごく悲しんでいたのが印象的でした。
樹木はオレゴンの「こころ」かも・・・なんて思います。